タイラより発信中

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十話 宣戦布告は女(レディ)から

reseli10人の男たちはエイジを中心に円形に陣を組んだ。

エイジは全員を見渡す。

(蟲腹じゃあねーナ。おそらくは特高か。)

その中の1人、リーダー格の男が自らの右手に「起動」と呼びかけた。

すると右手の周りに∞の形のホログラムが浮かび上がり、

この時代の通信機器であるライフ・コードに男は呼びかけている。

「男子生徒の方は包囲した。おそらくこちらがサイキックだ。

女子生徒の方はどうだ?」

エイジはそれを聞き逃さなかった。

「おい、オッサン。

こういったことも俺は良しとしよう。事実、能力者だしな。

しかしBu――――tだ。女生徒ってのはタエコの事か?

あいつは関係ねえぞファック!!」

 

リーダー格の男はホログラムの上からジロリとエイジを睨む。

「それを含めて調査の為に身柄を拘束する。」

エイジはあきれたようにおどけて言った

「ハッ。調べるだけって言って帰って来なかった奴を何人も知ってるぜ。」

エイジは突然走り出した。

短距離走の様に前かがみ正面突破で包囲を突き破ろうとする。

足元の砂利が飛ぶ。

牙雀が黒球の中からつぶやく

「俺は何もやらねえぞ~。」

エイジは真っすぐ前を見ながら突っ込んでいく。

男たちは銃を抜こうとするがリーダー格の男がそれを制して叫ぶ。

「相手はサイキックだ!アンチサイコダウンを張れ!」

男たちは両手を前に突き出して何か念じ始める。

するとエイジの体に見えない圧力がかかり動けなくなった。

牙雀は黒球の中からでもそれを感じる事ができた。

「おあっ!こりゃ蟲封じの呪詛に似てるぞ!!」

エイジの額には脂汗が出て来ていた。

「くおおおおお!これはあああ!」

ガクッと膝をついて倒れそうになる。が、

「なーんてな★」

エイジは右手を横に払うと見えない圧力を吹き飛ばした。

男たちは力を弾き返されて全員が後方へ倒れ込む。

エイジは涼しい顔で倒れている男たちに言った。

「ま、なんつーの?格の違い?」

そのまま走り出して

男たちに片手チョップで「ゴメンなすって」のポーズをして横を通り過ぎた。

そのまま走り去るかと思われたが、しばらく行くと

突然振り返り男たちの元へ戻ってきた。

置き忘れていた自分の荷物を拾い上げると

また「ゴメンなすって」のポーズで小屈みに走って行った。

 

学校では2時限目が始まろうとしていた。

妙子の2時限目は科学の授業である。

来栖は依然行方不明で生徒たちはどうするのかざわついていた。

チャイムが鳴る。

教室の前のドアが開き担任教諭が入って来た。

生徒たちは静まっていく。

担任教諭の後から白衣を着た20代の女性がヨタヨタと入って来る。

明るいブラウンで肩の下までストレートに伸びた髪がなびく。

白衣の下にはテラテラとしたピンク色のナイロンジャージが見える。

足元は踵を履きつぶしたスニーカーを引きずっている。

担任教諭が教壇の前に立つとその横で止まって生徒たちの方を向く。

真っ赤な口紅をした美しくもヤンキーの風体が生徒をざわつかせた。

担任教諭が紹介を始める。

「えー。来栖先生の代わりに急遽赴任された科学の担当の先生を紹介します。

さ、どうぞ」

と促すると女は

「ウイッス。」

とうなづきながら一歩前に出て首を傾けながら始めた。

「チィッス!

えー、いなくなった来栖センセの代わりに来ました

九条明日菜(クジョウアスナ)っス。

足んねーとこも有るかもしんねーけど、気合でカバーするんで

オメーらアタシの授業についてこいや!」

と拳を前に突き出した。静まり返る教室内。

事態を何とかしたい担任教諭の動揺が見て取れる。

九条はそんなのはお構いなしに授業を始めようと

担任教師をどけて教壇に立とうとする。

「センセ、邪魔っス。もう授業始めます。邪魔邪魔。」

担任教諭はおしやられてスゴスゴと教室から出て行った。

九条は生徒全員を見廻すと教壇に両手をバンッと置いた。

「よし!次はオメーらの自己紹介だ!端っこのオメーからイケ!」

ビシッ!!と端っこの生徒を指さした。

生徒は順々に自己紹介していく。

生徒全員が自己紹介し終わると

九条は一人一人の名前を目を見ながら名簿を見ずに名前を呼びはじめた。

今の一回で全員の名前と顔を覚えたのである。

「・・・齋藤浩二、西野真奈美、三谷弘樹。これで全員だな、ヨロシク!

オメーらとはもうダチだ!なんでも相談しな!

あ、先に言っておくけど金はねえぞ?シシシシシッ!」

と白い歯を見せて屈託なく笑った。

授業が始まると九条は漢字の読みを間違えたり、

ペンを鼻の下に挟んでウロウロと歩き回ったりと

スマートな授業ではないが余談を挟みながらの授業であっという間に終わった。

 

終了のチャイムが鳴り、礼を済ませると九条は妙子を廊下へ呼び出した。

廊下で妙子を壁際に立たせると

ジロジロと頭先からつま先まで匂いを嗅ぐようにねめまわした。

妙子はたじろいで

「何でしょうか」

と言いかけると九条は突然両手で妙子の胸をわしづかみにした。

「ぎゃあ!!」

と妙子が叫ぶと、もだえる妙子をしり目に全身を触りまくった。

最後にじっと眼の奥を覗くと

「ふむ。違うな。よかった。」

と妙子の肩をポンと叩いて

「ワリーワリー。これも仕事なんだ。妙子は違うな。

この間の事も何も知らないんだろ?」

妙子は驚いて九条に食いついた。

「昨日の事って、、、!エイジ君は!?何かご存知なんですか!?」

九条はニカっと笑い

「さーてネ。」

と歩き出して妙子を振り切った。

九条はツカツカと廊下を歩く。

階段下の用具室に入ると扉を閉めた。

左手にライフ・コード

(この世界での情報通信機械。本体はなくホログラムが現れる)

が現れ、話始める。

「了解。そちらは気づかれない距離で観察を続けろ。

 女の方は問題ない。」

ライフ・コードを終了し、ホログラムが消える。

「さぁて。懐に潜り込まれたぞ犬養。どう出るよ?」

にやりと笑う。挑戦的な笑みであった。

後では妙子が心配そうな目で九条が去った方向を見つめていた。