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八話 発動する力(ちから)

「来い!!牙雀!!」

とエイジが叫ぶと牙雀の体の端々がほつれ出して光の糸になり始める。

牙雀の目は白黒反転して虚空を睨む。

光りの糸はそれぞれにエイジの体にぞわぞわと絡みつき始め形を成していく。

手、足、頭、胴、大量の糸に順々に包まれていく。

エイジは身体を侵食されながら

眼を閉じて牙雀の声を聞いていた。

「よかろう、契約者よ。」

「貴様に力を貸そう。」

「だが決して忘れるな。」

「お前の欲望を果たしたその時。」

「魂を、もらうぞ。」

「魂を奪われた者には輪廻も復活も涅槃もない。」

「永遠に奈落の闇のしじまに留まり続けるのだ。」

「覚悟しておけ、闇と関りし人間よ。」

エイジはパチリと眼を開ける。

「永遠に、闇の中、、、。」

 

うつむいて表情が暗くなる。

そして、悲しそうに笑って言った。

「それなら、歌でも歌うさ。」

気を取り戻し、強い眼光に戻り叫ぶ。

「うだうだ言ってないで早くしろ!ファッ〇ン負け犬!!」

牙雀は当然怒り

「このガキ!!お前はめちゃくちゃ苦しめて魂をもらうからな!」

だんだんと形になっていくエイジと牙雀の姿を見て

来栖と百飢はおののいている。

明らかに自分より強い凶暴な動物に対面した時の

根源的な恐怖感である。

百飢は恐怖感をこらえて来栖を見捨てて逃げようと考えたが遅かった。

そこにはエイジと牙雀一体となった姿があった。

身体は6~7m人型をしていて銀髪が獣の毛皮の様に分厚く長くたなびく。

その中からエイジの顔が浮かぶが、色は白く瞳は獣の瞳となり、

どこか人間離れしている。

右腕は鋭く長い獣の爪のようになった鎧の腕が軋む。

左腕は人の腕の形をしている鎧の拳が握られている。

胴はたくましい筋肉に覆われ分厚い獣の皮の様な皮膚で守られていて

ところどころに小さい角や古い傷跡がある。

足は牙雀の様な大きな犬の脚になっていて

足先は鎧になっていて爪が鋭く力強い。

太腿の部分には黒球に刻印された紋章と九の文字が全面に描かれている。

腰には牙雀が巻いていた編み込んだ生地がたなびく。

その姿を見て来栖と百飢は愕然と言葉が出ない。

妙子は異様な事態が呑み込めないが

エイジが傷ついて戦っているのは理解していた。

恐怖にかられ百飢はやみくもに触手で打って出た。

「くそおおおお!!」

2本の触手は胴に何度も当たるが全くダメージを与えられない。

エイジはギョロリと触手を見ると右腕の獣の爪で軽く薙ぎ払った。

2本の触手は障子紙が水に溶けるようにあっけなく散り散りに破裂した。

百飢は苦痛にのた打ち回る。

その姿に来須はおろおろと百飢に触れられもせず離れらせもせずにいる。

百飢は少し落ち着きを取り戻すと苦痛をこらえてギロリと来栖を見た。

来栖は嫌な予感がした。

ガブリ。

百飢は来栖を頭から呑み込んだ。

両脚と白衣の裾だけが口から少し出ている。

もがもがと声だけは聞こえるが、

百飢は鳥が獲物を飲み込む時のように上を向いてバリバリと咀嚼した。

「せめて肉体だけでもいただくぞ…。」

ふう―ふうーと荒く息をしながら飲み下した。

エイジは冷淡に対峙している。

頭の中で牙雀の声が聞こえる。

「うお。うらやましい。」

エイジはその言葉を無視した。

百飢を冷静に見定めている。

「マズイな。」

妙子はこの状況を見て気を失っていた。

百飢はぐるりと向き返り

女生徒に抱えられる妙子をらんらんとした目でねぶった。

「もう一匹ぃぃ!!」

とうねりをうって妙子に飛びついて行く。

エイジは風を追い越して防ぎに行くが流石に間に合う距離ではない。

百飢のバカリと空いたムカデの口が妙子の数cmまで迫る。

その時

偶然だろうか。神の意思があったのだろうか。

女生徒のアンドロイドが足を踏み外して反転した。

エイジはスローモーションの様にその瞬間、女生徒の無表情な顔を見た。

妙子をかばう形になり、人を救ったのだ。

女生徒の体は百飢の顎に噛み砕かれて上半身が砕け散った。

部品が粉々になり飛び散る。

妙子は鉄塔から落下していく。

エイジは踵を返して助けに行こうとするが百飢が突進してまとわりついてきた。

「あれは俺が食うんだああああ!!」

エイジはイラついた。

「ファッ○ン!」

そういうと獣の右腕で縦に一閃すると百飢はこれを読んでいた。

長い体をたわませてかわす。そしてまたエイジに取りついてきた。

こうしてる間にも妙子は鉄塔の中を落ちていく。

途中で鉄柱に当たればただでは済まない。

さらにまとわりついて

「ジャアアアアアア!」

と唸りながら強力なあごで噛みつこうと迫ってくる。

口の中は血にまみれている。

カチンカチンと顎を閉じて噛みつこうとして来る。

ブチンッとエイジが切れた。

みるみるエイジの顔は凶悪な犬の顔に変わっていき顔が巨大化する。

「ガアアアアアアアアアア!!」

巨大な口を開けた。

びっしりと鋭い牙が並んでいる。

バクンッ!!と

百飢の頭部から胸にかけてを噛み千切った。

ぐしゃぐしゃになったムカデを吐き出しエイジは妙子を追う。

ずいぶん差をつけられてしまった。

重力に加えて牙雀の飛行能力で加速し遮る鉄柱は薙ぎ払って進む。

エイジの頭には崩落事故の日のけが人、妙子の笑顔が浮かんだ。

「ファーーーーーーーーーー○!!

あんな事!二度と!二度と!!許さねえっ!!!」