タイラより発信中

映画と漫画と総務の知識。

六話 戦い、守れ。

「やれ。」

来栖が命じると

2本の触手の鋭い先端がうぞうぞとうごめきながら

妙子の腹部から侵入しようとする。

その時

「ファーーーッ〇!!」

下から声が聞こえる。

「フ〇ーーーーーック!!!」

来栖は手を挙げて百飢を止める。

ニヤリとしながら下を見ると

「やっと追いついたか。遅いじゃないか。」

と言った。

 

妙子が下を見ると鉄塔の中盤に何かが、いる。

眼を凝らす。

動いている。

黒い塊。

人だ。

学生服。

金髪!

あのセリフ!

ギターケース!

妙子は思わず叫んだ!

「エイジ君っっ!!」

エイジは叫ぶ。

「フ〇ーーーーーーーーーーーーーーーーーック!!」

エイジは叫んで強風にあおられながらも

鉄塔の支柱を獣の様に駆け上がってきた。

エイジは妙子達の5m下まで到着した。

学校の壁を登ったのと同じ術を使っているので鉄柱に直角に立っている。

息を切らせて来栖を指さしながら叫んだ。

「お前が蟲腹だっのか!!

おびき出されたのは俺達だったって事かファッ〇ン!!」

来栖はニヤリと笑う。

目つきがおかしくなってきている。

「探り合っていたのはお互い様だろう?

今日だって君は気配を消しながら私を探して学校の中にいたじゃないか。

今日は私の方が一手早かったがね。

それともこの娘が恋しくて隠れてストーキングしていたのかな?」

エイジは来栖を睨みつけた。

「ユー、蟲を操っているんじゃねーな?

取り付かれている奴の目だぜ。

この近辺に住み着いていた蟲に魅入られたか。

その人形をうまい事取り付く媒介につかわれたな。」

来栖は鼻をこすって笑いながら語り始めた。

「ははは。君も質問かね。

私はね、科学者なんだ。教師なんてやってるけどね。

本当はロボット工学を学んでいた。

先の戦争でも私は政府のアンドロイド開発研究のチームにも抜擢された。

お偉いさんは強力な兵器を造らせるつもりだったろうが、

私の理念は違う。

戦争で死ぬ兵士をなくす。その為の代替の疑似兵士を造る。

悲しみをなくしたかったんだ。

経験しただろうが死ぬんだぞ?戦争って。20歳やそこらで。

さっきまで横で飯を食ってた家族!

毎日一緒に遊んだ友人!

一生を共にしようと思った恋人!

恋愛したい結婚したい子供を持ちたい夢を叶えたい旅がしたい遊びたい集めたい読みたい見たい視たい観たい食べたい行きたい話したい笑い笑いたい笑いたいたいたいたいたいたい!

その!その希望や夢が!

それが一瞬で強制的に簡っ単に消えた!

犬死だ!

一度きりの人生がバカな政治家の一存で!

できもしない無理な作戦に利用されて!

戦って死ぬならまだしも病死?事故死?餓死だと?

死ぬとわかってる捨て駒にされて!何万何十万何千万の人生が…

パア。

だから一人でも二人でもアンドロイド兵士を投入する事によって

命を救いたかった。

だがね、人の命を救う兵器などはありはしないのだよ

私たちの作ったアンドロイドたちは

その驚異的な能力で戦火を拡大させてしまった。

何万何十万何千万の人生が…

私の作ったアンドロイドによってパアだ。

あはははは!

私は何をやってきたんだ!

私はアンドロイド制作から身を引いた。

そしてこの学校の教師となった。罪滅ぼしに人を育てようと考えてね。

そこでとんでもない物を見つけたんだ!

アンドロイドだ!

入学生に混じって女子姿のアンドロイドが入学してきた!

精巧にできているから他の者にはわからないだろう。

しかししかししか~し!私にはわかるっ!!ふふ!

そのアンドロイドは何が目的なのかはわからないが

うまく生徒に順応して紛れ込んでいた。

素っ晴らしい出来だ!

そしてここからだ!!

重要なポイントだよ堤君!犬養君!

観察を続けるとそのアンドロイドはなんと心を持ち始めたんだ!

明らかにシステムやプログラムでは出しえない行動を始めた。

あの迷い、揺らぎ、ブレ、矛盾、まさに心だ!さらにさらにさらに!

そのアンドロイドは恋!ははは!恋をしていた!男子生徒に!

と、なるとだ。

彼女は何だ?もはや機械とは言い切れない。生命と言うには有機体ではない。

今も観察中だが計り知れない。

私の研究心に再び火がついた。

「あれ」を造ろう。

命を作り出そう。

私が殺してしまった分の命は私が造り出そう!

しかしね、アンドロイドを製作するなんて、とてつもない金がかかるんだよ。

闇市で中古の義体で済ましたとしてもね。

どうする!?苦しんでいる時に百飢が表れた。

最初表れた時は驚いたけどね。こんなに大きくはなかった。

家にいる時だ。

5cmほどのムカデが研究中の机に迷い込んできたと思ったら

語りかけて来るじゃないか!

虫にも心があるのか!!

発見ばかりだよ。

そして百飢と名乗るこのムカデは言った。

「人間の内臓を売ればいい。あれは金になる。

集めるなら手伝ってやる。ただし、お前の魂と引き換えだ。」

命を造るために命を犠牲にするなんてナンセンスだと思ったが

大事の前の小事、何事も対価は払わなければな。

百飢の提案に乗ったよ。

内蔵を奪う度、百飢は大きくなっていった。

売れない臓器を食っていたしね。

どうせ大した成果も成功も上げない平凡な凡人の命なんて

私に有効利用された方が世の為だ。

戦争の様に無駄にはしない。

私はあの無能政治家たちとは違う。

と、いうわけさ。

今回の崇高な趣旨をご理解いただけたかな?」

来栖は両手を広げてにこりと笑った。

エイジは歯ぎしりをしながら

「ファッ〇!」

とつぶやいて腰を落とし戦闘態勢に入った。

来栖は嫌そうな顔を浮かべた。

「ご理解いただけないようだね。まったくこれだから不良は。

戦うのはいいが、君の大事な彼女がこちらにあるのだよ?」

女生徒に吊るされている妙子の顔をムカデの触手が撫でる。

「……!!」

妙子は叫ばない。

キッっと来栖を睨んで言った。

「平凡で…凡人で…何が悪いのよ!!

みんな生き残れた大切な毎日を一生懸命生きているの!」

エイジは両手の親指人差し指小指を立てて顔の前で交差させた。

牙雀を呼び出す印である。

ひるむ様子はない。さらに腰を落とす。

「やってみろ。」

印がほんわり光出し、エイジの顔を照らす。

「お前が、ソイツに手をかける瞬間、

そこがユーの」

結んだ印ごしにギリリと睨みつける。

「ジ・エンドだ。」